■財政委員会(財務局)
  平成23年09月30日(金曜日)

上野委員 ことしで年次財務報告書の公表も五回目を迎えました。我が党の東村議員が提案し、導入を強力に推進してきました新たな公会計制度、その一つの成果が年次財務報告書でありまして、これはコスト情報やストック情報など、さまざまな側面から都の財政状況を明らかにする貴重なツールとなっているわけであります。
今回の年次財務報告書において、私が特に関心を持ったのは貸借対照表であります。これを見ますと、この五年間、一貫して資産が増加し、負債が減少し、正味財産が増加しているということがわかります。
貸借対照表とは、非常にすぐれた仕組みでできておりまして、ご案内のことと思いますけれども、バランスシートの名のとおり、資産の額と負債、正味財産の合計額とが必ず一致、バランスするようにできております。このため、ある資産を増加させるためには、バランスさせるために、別の資産の減少や、負債や正味財産の増加を伴うものでありまして、物事を複眼でとらえる仕組みとなっております。
すなわち、貸借対照表の資産や負債などの数値の増減は相互に関連性を持つものであり、その意味では、都の資産や負債等の増減を分析することで、マクロの視点から都の財政運営の傾向を読み取ることができるといえるわけであります。
そこでまず、この五年間の資産の増加、負債の減少、正味財産の増加について、その主な要因をお伺いいたします。
武市主計部長 理事からただいまお話をいただきましたように、資産はこの五年間でふえてございまして、具体的には二兆三千億円ほどふえてございます。
その要因といたしましては、骨格幹線道路など投資効果の高い社会資本の整備を着実に進めてきたこと、同時に、基金につきましても、税収が比較的好調でございました平成十八年度から平成二十年度にかけまして、財政調整基金などに積極的に積み立てを行ってきたこと、こうした点が主な資産の増加要因であるというふうに考えております。
一方、負債でございますが、こちらは、財政再建を達成した後も、負債の大宗を占める都債の新規発行を抑制し、その償還につきましても積極的に行ってきたことなどによりまして、毎年度減少し、この五年間では八千億円以上、圧縮をしてございます。
このように、資産が増加する一方で負債は減少しているために、その差し引きの結果といたしまして正味財産も増加をしてございますが、この間の事業評価や歳出の徹底した精査を通じまして収支差額の黒字確保に努めてきたことなどが、この財務諸表の数字にあらわれているものと認識をしております。
上野委員 答弁をお聞きしますと、都はこの間、税収の好調な時期には基金や都債の発行余力という財政の対応力を確保し、また、厳しい時期には基金などをうまく活用して必要な施策を推進したわけであります。それには、事業評価や歳出の精査などを通じた当期収支差額の黒字確保の努力が、一定程度、寄与しているものと理解できるわけであります。
財務諸表を分析すれば、都の財政運営の全体像や、資産、負債の相関関係についても客観的に検証することが可能ということであります。
この五年間、一貫して資産規模が増加しているわけですが、私は、税収が増減する、すなわち景気の変動する中においても、真に必要な社会資本の整備は確実に推進していくことが非常に重要と考えております。そこで、少し視点をミクロにしまして、財務諸表をもとに、これまでの都の社会資本整備の状況について伺ってまいりたいと思います。
従来の官庁会計におきましては、社会資本整備の水準の一つの目安として、投資的経費が挙げられます。一方、新たな公会計制度によるキャッシュ・フロー計算書を見ますと、投資的経費が、行政サービス活動に約三千八百億円、社会資本整備等投資活動に約三千三百億円と、区分して計上されております。
そこで、キャッシュ・フロー計算書における行政サービス活動と社会資本整備等投資活動の投資的経費の違いについて、確認のため、お伺いいたします。
武市主計部長 新たな公会計手法におきましては、この投資的経費につきまして、これまでになかった新しい切り口で分類を加えてございます。それが理事からお話のございました、行政サービス活動なのか、社会資本整備等投資活動なのかという分類、これが新しい分類でございまして、行政サービス活動に計上しております投資的経費というものは、例えば国直轄事業負担金など、東京都が保有する固定資産の形成には直接寄与しない、そういう経費でございまして、行政コスト計算書におきましては、当該年度の行政サービスに係る費用として計上されております。その結果、貸借対照表、いわゆるバランスシートにはあらわれてまいりません。
一方、社会資本整備等投資活動に計上しております投資的経費につきましては、これは例えば、臨海部に移転をいたします都立産業技術研究センターのような行政サービスの活動拠点となる施設でございますとか橋梁、ふ頭など、都市活動を支えるインフラ整備といいましたような東京都の固定資産の形成に直接寄与する経費でございまして、こちらは、バランスシートにおきましては資産の増加に反映されるものでございます。
上野委員 新たな公会計制度では、官庁会計と異なりまして、投資的経費について、固定資産の増加にかかわるものと単年度の行政サービスにかかわるものとを明確に区分し、把握、管理されているということであります。
したがって、インフラ資産や行政財産など、都の保有する社会資本の増加につながる投資の傾向を把握するためには、キャッシュ・フロー計算書の社会資本整備支出の額を見ればよいということであります。
そこで、キャッシュ・フロー計算書の社会資本整備支出の額につきまして、過去五年間の推移を伺います。
武市主計部長 キャッシュ・フロー計算書におけます社会資本整備支出の過去五年間の推移でございますが、平成十八年度は二千九百五十六億円、それから十九年度は三千二百十一億円、二十年度三千四百五十九億円と連続して増加をしてございまして、さらに、二十一年度にはピークとなります三千四百八十六億円を計上してございます。二十二年度は減少に転じたものの、幹線道路の整備など必要な事業を着実に進めまして、三千三百二十六億円と高い水準を維持しているというふうに考えてございます。
この社会資本の整備は、新たな雇用や需要を創出いたしまして、経済への波及効果も非常に高いものでございまして、税収が大きく減少した二十一年度以降も着実に推進をしております。
上野委員 ただいまの答弁にもありましたように、平成二十一年度以降の税収が大きく減少するまさに厳しい財政環境の中におきましても、都は、ほぼ一定の投資水準を維持し、社会資本整備を着実に推進してきたことが、数値をもって確認できたわけでございます。
つまり都は、厳しい社会経済状況の中だからこそ、景気を刺激し、新たな雇用や需要を創出する社会資本整備、いわゆる公共事業関係費を推進してきたということでありまして、私はまことに正しい取り組みであると、このように思います。
それに比べまして、民主党政権下の国は、この間、公共事業費を大幅に削減してきました。国の公共事業関係費の当初予算は、平成二十二年度は前年度に比べ過去最大の一八%もの大幅な削減がなされておりますし、また、二十三年度はさらに五%削減、先日閣議決定された二十四年度予算の概算要求基準では、さらに一割の削減が求められています。仮に二十四年度予算がそのまま一割削減となれば、政権交代前の二十一年度予算と比べますと、何と三割もの削減となるのであります。
こうした状況に、多くの中小企業は、とんでもないことだ、国は我々中小企業の現場の苦しみは何もわかっていないと怒っている、こういう声が来ます。財政状況が厳しいからといって、やみくもに公共事業を減らしては、中小企業の倒産がさらに増加し、景気のさらなる悪化を招くのは明らかであります。厳しいときだからこそ、しっかりと将来への投資を行うことが、経済の好循環を招くことになると考えております。
さきの答弁のとおり、都は、財政環境が大きく変動する中でも、公共事業を着実に推進しております。また、当初予算ベースで見ても、投資的経費を七年連続で増加させ、平成二十三年度は八千四百四億円、石原都政で過去最高の水準となっております。
こうした都の取り組みに対しまして、私の地元には、多くの中小企業経営者から、東京都は中小企業を守り、景気を少しでもよくしていこうという意欲を感じると、こういう感謝の声が届いているわけであります。こうした都の取り組み姿勢を、私は高く評価しているものであります。
ましてや、このたびの東日本大震災を受けまして、地震や水害などの災害に備えるための社会資本整備の重要性がますます高まっております。そうした中、都民の生命、財産を守ることはもとより、厳しい環境にさらされる中小企業をしっかりと支えるためにも、引き続き真に必要な社会資本の整備を進めていく必要があることを、改めて述べさせていただきます。
さて、社会資本整備支出を行うということは、当然、その分、固定資産が増加するわけでありますが、資産を保有するということは、一方で、維持管理費や老朽化に伴う補修費、また更新経費の増加につながるものであります。
都有資産について、毎年の維持管理や補修にかかわるコストを示すものとしては、行政コスト計算書の維持補修費が、また老朽化の目安としては、毎年の減価償却費の累計である減価償却累計額が挙げられます。
そこで、行政コスト計算書の維持補修費と貸借対照表の減価償却累計額につきまして、平成十八年度決算と二十二年度決算とを比較して、どのように増減しているのか伺います。
武市主計部長 行政コスト計算書におけます維持補修費は、平成十八年度の五百九十六億円に対しまして、平成二十二年度は七百二十六億円でございまして、百二十九億円、二一・七%の増加となっております。
また、貸借対照表における減価償却累計額は、平成十八年度末の二兆三千六百十三億円に対しまして、二十二年度末は二兆八千九百十二億円となっておりまして、五千二百九十八億円、二二・四%の増加となっております。
上野委員 維持補修費と減価償却累計額のいずれも、この五年間で大きく増加しているところでありまして、単純にはいえないと思いますが、資産の増加や施設の老朽化に伴い、維持補修費が年々増加しているのではないかと推察されるところであります。
都有施設の多くは、昭和四十年代や平成一けたの時期に整備されてきたものでありまして、老朽化が進む中、今後、計画的な維持更新が不可欠となっております。こうしたことから、財務局では、平成二十一年二月に主要施設十カ年維持更新計画を策定しまして、建物そのものの長寿命化や維持管理コストの低減によりライフサイクルコストの縮減を図るなど、中長期的視点に立って施設の維持更新に努めているところと聞いているわけでございます。
一方、先般の東日本大震災は多くの教訓をもたらしました。今後の維持更新の方針にも、少なからず影響を及ぼすものであったことと思います。都有施設について耐震化を進め、震災時にもしっかりと機能を確保する必要があることはいうまでもありませんが、例えば今般の電力危機を踏まえますと、これまで以上に電力使用量の削減や電源確保を進めていくという視点も重要でございます。
今後は、ライフサイクルコストの縮減はもとより、大震災の教訓もしっかりと踏まえて、より一層効率的、効果的な施設整備を推進していただくよう、強く要望するところであります。
ここまで社会資本整備という観点から質疑を行ってまいりましたが、新たな公会計制度による情報が年々蓄積されてきておりまして、今後とも財政に関するさまざまな情報が財務諸表から得られることと思います。国や他の自治体に先駆けて導入したからこそ、その成果も、どこよりも早く享受することができるものでありまして、進取の精神で公会計制度改革を断行した都の姿勢を改めて高く評価したいと思います。
都民に対する一層の説明責任を果たすとともに、財政運営や事務事業を絶えず検証していくために、蓄積された情報を都政改革のツールとして積極的に活用していくことが今後とも必要であると考えます。
そこで、最後になりますが、新たな公会計制度の一層の活用に向けて、局長からの力強い言葉をいただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
安藤財務局長 都のすべての会計に複式簿記・発生主義を導入して、五年が経過をいたしました。この間、この新たなツール、これが仏つくって魂入れずにならないように、さまざまな効果的な活用方法を模索しながら取り組みを進めてまいりました。
例えば、今回発表した年次財務報告書では、企業のアニュアルレポートを参考にいたしまして、マクロの視点から都の資産や負債などの財政状況を分析しております。同時に、ミクロの視点からも、予算編成の一環として実施しております事業評価において、発生主義の考え方を踏まえて、複眼的に事業の効果、コスト等を検証することで質を一層高める工夫を凝らすなど、ようやく都庁全体で当然のルールとして定着してきたなというふうに思っております。
財政環境、先ほど申し上げましたけれども、足元はともかく、将来的には厳しい経済状況が見込まれておりまして、税収の改善というのは考えにくいという、こういう財政環境の先行きが不透明な中にございますので、より中長期的な視点に立って健全な財政が求められているわけでございますが、こうした中で、この新たな公会計制度の果たす役割はますます重要になっているというふうに思っております。
理事がお話しされましたように、蓄積されました経年データの分析をさらに深めるとともに、職員一人一人がこの公会計の視点を持って仕事を取り組むように、分析手法でありますとか着眼点の共有を進めることで都庁の自己改革力を高めて、引き続き堅実な財政運営に努めてまいりたいと思います。

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