■財政委員会(財務局)
  平成23年03月02日(水曜日)

上野委員 都議会公明党は、先日の中嶋幹事長による本会議代表質問の中で、二十三年度予算における景気、経済、雇用の拡大に臨む都の姿勢と、事業評価を初めとした堅実な財政運営への真摯な取り組みに対して、高く評価したところであります。
また、首都東京特有の財政需要や今後到来する都市インフラの更新需要を考えれば、今後とも、新たな公会計制度などをフルに活用し、これまでにも増して財政基盤の強化に取り組むべきであると主張したところでございます。
依然として財政環境が厳しい中にあって、切実な都民の声を速やかに施策として展開していくためにも、今後、自己改革の取り組みが一層重要となることは間違いないと思っているところであります。
そこで、この自己改革の取り組みが二十三年度予算編成の中でどう進められてきたのか、質疑を通して具体的に明らかにしていきたいと思います。
知事が我が党に、身を削る歳出削減により財政再建を達成した後も、自己改革を当然に進める仕組みを都庁組織に組み込んできたと答弁いたしましたが、都庁における自己改革の取り組みの代表例といえば、それは事業評価でございます。
この事業評価はことしで五回目となりましたが、まず初めに、確認の意味でお聞きいたしますが、事業評価はどのような仕組みで、これまでどのように進展してきたのかお伺いします。
長谷川主計部長 事業評価は、石原知事就任後、二次にわたる財政再建推進プランに基づき集中的に実施してまいりました事業見直しの成果を踏まえまして、この見直しの努力を財政再建達成後も継続して実施していくための制度として立ち上げたものでございまして、事業の検証を通じてみずからを改革する力を、いわば都庁組織に内在化させる取り組みでございます。
具体的には、予算編成の一環として、各局と財務局が連携して事業の成果や決算状況を厳しく検証した上で、見直し、再構築や、あるいは拡大、充実などの評価を行いまして、効率的でむだがなく、実効性の高い施策へと向上させていくというものでございます。
この間、情報システム関係など対象となる事業に応じて、所管する関係部局との連携を強化するとともに、新たな公会計手法を活用したコスト分析を充実させるなど、多面的な検証を行う取り組みとして着実に浸透してきております。
今年度におきましても、監理団体などを通じて実施する事業を新たに評価対象に加えるなど、評価対象や手法を拡充して、もう一段のレベルアップを図ったところでございます。
上野委員 事業評価は、今の答弁にもありましたとおり、予算編成の過程でより多面的な検証を行うための継続的な取り組みとして、都庁内部に着実に浸透してきているところであります。
また、財務局と対象事業に関係する部局との連携による評価や、新たな公会計手法を活用したコスト分析を進めておりまして、今年度も、監理団体等の事業などへの評価の拡大や、関係する局と連携した評価メニューの充実などによりまして、検証を一層多面的なものとしているとのことでありますが、とりわけ事業評価においては、我が党が強く推進してきた新しい公会計手法が大いに活用されてきたとのことでありますので、事業評価における新公会計手法を活用したコスト分析が実際にどう機能しているのか、具体的に検証していきたいと思います。
事業評価の対象は多様であります。先日配布されました東京都予算案の概要に掲載された幾つかの事例に限って見ても、コスト分析にはさまざまな着眼点があるように思います。
中でも、私が着目したのは二点ありまして、一つは、以前、大島支庁に赴任したことがございましたので、大島支庁管内の神津島三浦漁港への防砂潜堤の設置の事例であります。もう一つは、私が三年前の予算特別委員会で取り上げましたが、ミシュランの旅行ガイドで三つ星に指定され、海外からも多くの観光客が訪れるようになった高尾山、その山頂へのトイレ設置の事例であります。
いずれも、発生主義によるコスト比較を行っている点は同じでありますが、分析に向けた視点は異なると思われます。そこで、この二つの事例における分析の視点の違いがどのようなものか、具体的に説明していただきたいと思います。
長谷川主計部長 お話の二つの事例につきましては、いずれも公会計手法を用いて一定の政策判断に至ったものでございますけれども、神津島の三浦漁港の事例は、防砂潜堤という、これは港の背部の山からの土砂の流失で船の安全航行に影響を与えることにならないように、そういう砂を防ぐ潜堤、水面下の堤ですね、これを設置すべきか否かという新たな事業の実施の可否そのものについての判断、また、もう一方の高尾山の事例は、トイレを増設するということに当たりまして、必要な給水の方式についてどの方法がベストかという、いわばサービスの提供方法の選択についてそれぞれ検証したという点で、分析の視点に違いがございます。
具体的に説明いたしますと、まず神津島の事例では、従来、毎年、港に流出する土砂のしゅんせつ作業を行ってきたわけでございますけれども、先ほど申しました防砂潜堤を新たに設置してしゅんせつの頻度を大幅に減らすという所管局からの予算要求がございまして、これを受けて、施設整備による多額のその初期投資が、従来どおりにしゅんせつを毎年継続した場合のコストに見合うメリットのあるものなのかという視点から、公会計手法を使ったコスト比較を行ったものです。
検証の結果として、防砂潜堤を設置する方法では、一時的に工事費などの現金の支出はふえるものの、耐用年数を考慮して、減価償却費も含めて一年当たりのコストを試算すると、年間四千三百万円のコスト縮減となるということから、設置が妥当であると判断したところでございます。
一方で、高尾山の事例ですが、観光客数が、先ほどお話があったように大幅に増加したということで、山頂にトイレを増設する必要が生じたわけですけれども、それによって使用する水量が大幅に増加するということから、いかに最少のコストで適切なサービスを提供していくかという視点から、給水方式の比較検証を行ったものでございます。
従来どおり沢の水のみを利用する方式、それから沢の水と上水道を併用する方式、それと上水道のみを利用する方式の三つの方式についてコスト比較をした結果として、減価償却費や上下水道料金などのランニングコストの合計が最も小さくなる併用方式が、給水方式として妥当であると判断したところでございます。
こうした事例からもわかるとおり、さまざまなケースに応じて公会計手法を活用した多面的な検証を行うことで、発生主義の観点から、将来への影響も含めた分析、試算が可能となるなど、効率的でむだなく、実効性の高い施策の構築につながるものと考えております。
上野委員 ご答弁にあったように、神津島の例では、多額の初期投資というものと、それから毎回行われるしゅんせつ費の投資、これは、いわゆる新公会計導入前の単式簿記・現金主義では比較できなかったわけでありますが、それが複式簿記・発生主義会計で見れば、この一年の減価償却費単位で比較できるようになったために、長期的なスパンできちんと回収できて、よりメリットがあるということが明らかに見えたわけであります。
神津島と高尾山の例を通じて、初期投資の大きい事業を実施するか否か、どのようにサービスを提供するかという種類の異なる検証においても、ともに発生主義の観点から、ライフサイクルコストを見据えつつ、それぞれの視点で分析が行われてきたことがよくわかったわけでございます。
また、今回の事業評価では、新公会計手法によるコスト比較の取り組みの一環として、新たに、平成二十二年度に完成し二十三年度から本格稼働する水門管理システムの事例、既に着手している事業の再検証を行っております。
そこで、発生主義の観点から再検証を行うことにどのような意義があるのか、今回の事例を踏まえて具体的にお答えください。
長谷川主計部長 再検証の事例ということで、東部低地帯における水門や排水機場などを管理するために設置しております水門管理システムでございますが、これについては、老朽化が進んだことを背景といたしまして、管理の一元化による運営体制の見直しを伴うシステムの再構築に平成十六年度から取り組んでまいりました。
今回の再検証は、平成二十三年度から新たなシステムが全面的に稼働するに当たりまして、管理の一元化に伴う業務の省力化や点検の委託化などの運営体制の見直しが、コストの観点から果たして適切に図られているかについて、この機会をとらえて改めて評価したものでございます。再構築前後の水門管理の人件費や事業費などの年間のコストを、発生主義の観点から、金利や退職給与引当金なども含めて試算をして比較いたしました。
こうした再検証を通じまして、維持管理費などの事業費は増加するものの、人件費の大幅な縮減によりまして、水門の管理、運用経費全体では年間約一億八千八百万円のコスト縮減が可能となることが確認することができました。
このように、事業が当初の目的どおり適切に効果を発揮するものとなっているかどうかについて、事業進捗の大きな節目に改めて確認して、これをその後の事業実施に反映していくということが可能となるという点で、こうした再検証を行うことは有意義であるというふうに考えております。
上野委員 今の答弁の事例のように、長期間をかけてシステムを構築するといった事例では、当初の計画を淡々と実施するのではなく、実施に当たって改めて確認することが重要であります。事業の効率や効果を十分に高めるためにも、事業の進行段階に応じて適宜検証を行い、そこで得た結果に基づいて適切な判断を行っていくことが必要であります。
ところで、この事業評価の中で、数字ではなかなかあらわせない効果をどう評価するのか、このことも重要でございます。新たな公会計手法は、事業評価のツールとしては必要不可欠なものとなっておりますが、公会計イコール事業評価ではないということであります。
そこで、その効果がうまく出ているのか出ていないのか、会計手法とは違った視点で検証することも、これは事業効果には必要であると、このように私は考えております。
例えば先ほどの水門管理システムで申し上げれば、建設局が一元化ということで取り組んできたわけでありますけれども、オール都庁で見たときに、本当に一元化されているのか、こういう視点が大事です。
水門管理は、港湾局でもやっている、建設局でもやっている、区でもやっている、国でもやっているわけですから。港湾局では十九カ所、建設局では十カ所、区では八カ所やっているわけです。それぞれが縦割り行政の中で別々に管理されており、一元化はされていないんです。
東部低地帯の高潮対策という、この大きな視点で見たときに、都民からすれば、これはもう一緒なんですね。東京都、建設局、港湾局、区というのが、要するに連携して一元化されて初めて、この東部低地帯に住む約三百万人の生命と財産というのは守られる、金銭でははかれないほどの効果があると、このように思っているわけでございます。
このようなことがほかにも、例えば教育庁、福祉保健局、生活文化局、同じような事業をそれぞれの局で行っているところが見受けられるわけであります。
この都庁全体を見えるのが、実は財務局であります。縦割り行政によるむだがないか、各局連携によって、より都民サービスあるいは安心・安全の向上が図られ、効果が出るのではないか、そうした視点での事業評価にもぜひとも取り組んでいただきまして、一つ一つの施策を効果的で効率的なものへと向上させ、都政を改革していただくよう、これはもう財務局に期待するものでございます。
もう一つ重要なことは、事業評価に財務局と各局が共同で取り組み、公会計の手法を活用しながら検証の実績を積み重ねていけば、知事が代表質問で述べたように、職員に金利感覚やコスト意識を確実に根づかせていくことにつながるということであります。
例えば職員の経営的な感覚が高まれば、状況の変化に敏感になり、見直し、再構築を行う事業も当然ふえ、必要な継続事業の質が高まる一方、効率化で事業費も削減できるわけであります。
事業評価の取り組みがあるからこそ、常に見直しが出ると。見直しの中で生み出した財源が、施策の拡充や次の新たな施策に振り向けられ、必要性の高いサービスの向上につながっていくわけでございます。これは、本来当たり前のことであります。しかし、当たり前だからこそ大事なのであります。
実際、今回、事業評価とは別に、各局からの予算要求から、財務局との調整を行う中で歳出が厳しく精査され、八百九十億円の事業費削減が図られたことは、事業評価を導入した一つの効果として、職員の皆様に検証の芽が根づいたことを示していると、このように思います。
冒頭に申し上げたとおり、都税収入の大きな好転は期待できません。都財政を取り巻く厳しい状況から抜け出す兆しは、残念ながら現時点で見つけることができません。そうした中にあっても、都民が真に必要とする施策を実現し、生活を守っていくことは重要でございます。そのためには、都の職員の質の向上とモラールの向上が不可欠でございます。
ところが、最近の行財政改革の中で懸念していることがあります。それは、むだの削減というと、すぐに職員の人員削減と、こうなっている。確かに都民からもわかりやすいのでありますが、これはある種のポピュリズムに走っているように思えて私はなりません。
つい先日も、石原知事は、職員をもっと削れるのではないかといわれたようでございますが、それは、私からいわせれば、現場の実態をよく知らないからいえる言葉でございます。
どうか財務局長は、もっと職員の現場の実態というのを知事に説明してもらいたい。そういう機会にあるのは局長でございますので、ぜひともそれはお願いしたいなと思いますよ。
以前も委員会で話をしましたけれども、事務所も本庁も、本来、統括の立場で職員の人事管理や進行管理をしなけりゃならない係長、それが、例えば現場に行けば、一兵卒になって残業しながら設計をやっているんですよ。これが実態です。
要するに、チェック機能を果たす時間もないわけでありますし、また人もいないんです。その結果として、結局、監査、検査で単純ミスが指摘されて、税金のむだ遣いというのが生じてしまっている。
また、都民要望は多様化しております。そうした中では、本当にその仕事量、一人一人の負荷というのは増加しているんです。一方で、職員は逆に削減される。そうした中で、今度はベテラン職員が退職していく。若い人へ教育する余裕さえなくなっている。そうしたことは、結局、職員の質の低下を招き、都民サービスの低下にもつながっていくのではないかと、大変に私は危惧しているところでございます。
本当に職員の方はまじめです。一生懸命やっていらっしゃる。だから、自分のやることに対しては、本当に無理をしてやって、職場でできないことは、黙って家まで持って帰って仕事されている。そうした中で、これは残念ですけれども、精神的な患いでうつ病にかかる方、最近は職員の方でふえている、このように聞いているわけでございます。
人員削減は、既にもう限界に来ているんです。これまでの人員削減で、東京都は十分に効果が出ております。これは以前も話しましたけれども、都の職員数が一番多かった美濃部都政時代には約二十二万人いました。それが今や約十六万人、これは当時からすると六万人削減されているわけでありまして、一人の一年間にかかる人件費というのは約一千万円と聞いておりますから、単純計算すれば、その当時からすると、六千億円の削減をしているということでございます。どうか、もっと正しい行財政改革のあり方を進めていかれることを私は強く望むものでございます。
その意味で、事業の必要性や効果を検証し、むだを省く取り組みの重要性がこれから一層高まることになると思います。
そこで、事業評価などを活用して、今後も都庁の自己改革を磨き、進めていくべきと考えますが、最後に局長の見解を求めて、私の質問を終わります。
安藤財務局長 二十三年度におきます事業評価の具体的な評価について、ご説明と申しますか、お話しをさせていただく機会をいただきましたけれども、事業評価は五年目を迎えました。予算編成の一環として根づいておりまして、とりわけ新公会計制度という有効なツールも活用しながら、さらにことしは、お話もありましたけれども、評価対象の拡大であるとか評価手法の充実、また、各局とも緊密な連携などを通じて事業を検証する機能というのは一層強化してきたかなと思います。
そして、この取り組みを継続してきたことが、都庁全体の中で、効率的でむだがなく、施策の実効性を高めるという意識が組織に根づいてきたかなというふうに思いますし、これこそが都庁の自己改革力のさらなる向上につながったものであるというふうに思っております。
都財政を取り巻く環境は大変厳しいものがございますので、私どもとしては、財政の健全性を維持することがますます重要になってくると思います。したがいまして、事業評価の取り組みを初めとして、これまでやってきました都庁の自己改革力を十二分に発揮しながら、強固な財政基盤の堅持に向けて不断に取り組む必要があるというふうに思っております。
なお、さまざまなご意見をちょうだいいたしましたが、私ども仕事をしていく上で、スリムな組織というのは常に求められているというふうに思っておりまして、これは直接私どもの所管ではございませんが、事業の見直しをすることによって、それに必要な組織体制、人員体制はどうあるべきかというのを常に議論してまいりますので、その結果として、余剰人員が出れば、それはやはり削減すべきだというふうに思いますし、新しい仕事が出てきて、それにマンパワーが必要であれば、そこはやはり手当てすべきだということをやってきたと思います。
この間、事業の見直し等に伴って人員削減が出てまいりましたけれども、一定程度そういう努力も都民から求められていることは確かでございますが、最終的に私どもに課せられた使命、仕事は、お金をいただき、組織をいただき、人をいただきながら、きちっとしたサービスにあるということが原点かと思っておりますので、それを原点にこれからも財政運営に努めてまいりたいと思っております。

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