■財務委員会(財務局)
  平成22年10月04日(月曜日)

上野委員 年次財務報告書の公表も、今回で四回目となりました。我が党が提唱してきました新しい公会計制度が都政運営にしっかりと定着していることは、まことに喜ばしいことでございます。
二十一年度は、税収が前年より一兆円以上減少するという史上最大級の大波を受けたわけでございます。財務局も、財政のかじ取りには、さぞかし苦労をされたことと察する次第でございます。
私からは、公会計のマクロ的視点から、二十一年度の財政運営がどういうものだったのか、このことについて幾つか質疑を行っていきたいと思います。
このたびの年次財務報告書、こちらの九ページになりますけれども、新たな公会計手法による分析という項目がございます。財務諸表の概要の冒頭に、平成二十一年度は、都税収入が前年度と比較して約一兆円の減となったものの、歳出の洗い直しや、これまで培った財政対応力の活用により、都民サービスに支障を生じさせることなく、都がなすべき役割を果たすとともに、強固な財政基盤を確保していると、このように総括されているわけでございます。このことが財務諸表の中でどのようにあらわれているのか、これをしっかりと確認していきたいと思います。
そこでまず、都税収入が一兆円も減少する中、行政サービスにかかわる費用をどう賄ったのか、そのことを確認できるのが行政コスト計算書でございます。この行政コスト計算書で読み取れる二十一年度の財政運営の特徴について、まず初めに伺います。
長谷川主計部長 二十一年度の行政コスト計算書では、通常収支の部における費用は五兆六百九十四億円と、前年度とほぼ同規模であるのに対しまして、収入は、都税収入が一兆円を超す過去最大の減少となったことによりまして、五兆一千八百三十四億円と、前年度に比べ九千三百八十二億円の大幅な減収となっております。
こうした厳しい状況にありまして、一年間の行政サービスの収支をあらわす当期収支差額につきましては、前年度に比べ大幅に減少はいたしましたが、一千二百十二億円の黒字を引き続き確保しております。
二十一年度は、都がなすべき役割を果たしつつも、歳出の精査などの努力を行うことで、費用を昨年度と同じ水準にとどめまして、行政サービスに必要な費用を、大幅な税収減の中にあっても、すべてこの年度の収入で賄うことができたといえるものと考えております。
上野委員 財政当局を初めとした各局の努力によって、都民サービスに支障を生じさせることなく、都がなすべき役割を果たしたということでございます。
次に、年次財務報告書では、二十一年度は、これまで培ってきた財政対応力を活用するとともに、強固な財政基盤を確保していると総括されていますが、財務諸表のどこからそれが読み取れるのか、お伺いいたします。
長谷川主計部長 都債や基金といった二十一年度における財政対応力の活用につきまして、キャッシュ・フロー計算書によって説明させていただきますと、都債発行については、財務活動の収入のうち、都債が四千七百六十六億円計上されておりまして、前年度と比べ一千七百二十億円の増という形であらわれております。
また基金の取り崩しにつきましては、社会資本整備等投資活動の収入のうち、法人事業税国税化対策特別基金や財政調整基金などの基金繰入金が三千四百六十八億円計上されておりまして、前年度と比べ二千七百六十八億円の増という形であらわれております。
一方、財政対応力をどの程度堅持しているかという点につきましては、二十一年度は、このように財政対応力を活用は一方でしているものの、貸借対照表によれば、基金の残高は前年度末とほぼ同水準を維持しておりまして、また、このうち活用可能な基金残高は、二十一年度末現在で一・三兆円以上となっているということなどで、引き続き強固な財政基盤は確保されているものと考えております。
上野委員 さて、今回の年次財務報告書では、財政対応力の活用という章を改めて設けまして、そもそも財政対応力とは何か、どのように培い、活用したのか、後年度に影響を及ぼす財源である都債と基金積立金に着目し、財務諸表を用いて、これまでの取り組みを経年的に読み解いております。
四年間の経過を通じた分析を見ますと、二十一年度がこれまで培ってきた財政対応力を初めて活用した年であり、まさに財政面で新たなステージに突入したことがよくわかります。このように、財務諸表の経年的比較は、新公会計制度をツールとして、うまく活用したからこそ得られた、非常に興味深い情報であります。
今回テーマとなった財政対応力とは、少し俗っぽく例えるならば、ローンと貯蓄に代表されるものであります。貯蓄に当たる基金積立金は、残高と毎年の増減を見ることで現在の状況を容易に理解できます。一方、ローンに当たる都債残高は、単年度の増減だけを見ていても、都債の発行余力を正確に把握できるものではありません。個人や会社がお金を借りる際と同様に、資金使途と返済能力が重要であります。
資金使途とは、都債を発行する目的のことでありますが、設備投資によって資産と負債がふえているのか、それとも赤字補てんの資金繰りのために負債だけがふえているのかという違いは、将来のバランスシートに大きな影響を及ぼします。
また、返済能力とは、後年度の財政負担に耐えられるかどうかということであります。このため、将来の返済への備えや都債発行額の大きさなども確認することが重要であります。
そこで、都はこれまで、都債の発行余力を培ってきたとしていますが、都債の発行余力をどのように培ってきたのか、具体的にお伺いしたいと思います。
長谷川主計部長 お話のございました、都債の資金使途と返済能力という観点に沿ってご説明させていただきます。
まず初めに、都債の資金使途という面につきましては、都はこれまで、世代間負担の公平の観点から、都債の充当事業については、地方財政法が定める社会資本ストックを形成、更新するための経費などに限定し、起債に対して過度に依存しない財政運営を行ってまいりました。
平成二十一年度には、大幅な税収減に直面いたしまして、減収補てん債を一千三百九十億円発行しておりますけれども、これも建設事業等の財源としてすべて充当しておりまして、いわゆる赤字債は発行しておりません。
また、返済能力という面でございますけれども、この面でも、その確保に意を用いまして、後年度に過度な財政負担とならないように、堅実な都債の発行と管理に取り組んでまいりました。
具体的に申しますと、都債の新規発行額を石原知事就任の前後で比較いたしますと、平成四年度から十一年度までは年平均発行額が七千六百億円であったというのに対しまして、知事が最初に予算を編成した十二年度から二十年度までの年平均の発行額は三千百億円と、四割の水準まで抑制してきております。さらに、十九年度及び二十年度には、国の減税措置に伴い発行した減税補てん債等についての借りかえを抑制いたしまして、元金償還を着実に進めることで都債残高の圧縮を図るとともに、一時期、積立不足のありました減債基金につきましても、現在は確実に積み立てておりまして、将来の償還に向けた備えもしっかりと行っております。
このように、資金使途、返済能力の両面から発行余力を高めてきたことによりまして、今回のような大幅な税収減に際しても適切に対応することができたというふうに考えております。
上野委員 都債は、社会資本ストックの適切な形成、更新の財源として非常に重要であります。また、必要に応じて適切に活用する必要があります。したがいまして、単に各年度の増減を取り上げてよしあしを判断すべきではありません。
そうはいっても、将来確実に支払わなくてはならない負債であることは間違いありません。これからも都債の発行余力を確保し、適切な運用に努めていただくよう要望するものでございます。
さて、年次財務報告書が初めて報告されました平成十八年度は、複式簿記・発生主義による新公会計制度を導入した年であるとともに、財政運営にとっては、第二次財政再建プランの最終年度として、新たな財政運営が始まる大きな節目ともいえる年でございました。そして、十八年度以降、景気回復の影響などを受けまして税収が堅調に伸びていく中であっても、年次財務報告書に示されているように、基金の積み立てや都債残高の圧縮に積極的に取り組むことで、都は財政対応力を着実に培ってきたのでございます。
そこで、新公会計制度を導入した十八年度からこれまで、複式簿記・発生主義の視点を踏まえました財政運営の基本的な考え方はどのようなものであったのか、改めて伺います。
長谷川主計部長 平成十七年度決算で実質収支が黒字に転換いたしまして、財政再建を達成することができましたが、そもそも収入の大宗を占める都税収入は、その構造上、景気変動の影響を受けやすい不安定なものでございます。このため、社会経済状況が大きく変化する中にあっても、都がなすべき役割をしっかりと果たして、新たな財政需要にも確実に対応できる強固な財政基盤を確立することが、この間の財政運営の大きな目標でございました。
こうした中、新公会計制度を導入いたしまして、複式簿記・発生主義に基づく財務諸表を作成し始めたこともありまして、これを活用して、将来起こり得る負担を把握して備えを充実させるということなど、中長期的な時間軸の中で財政運営をとらえるという視点を改めて強化いたしました。
こうした視点のもとで、税収減に備えた基金残高の確保に努めるとともに、将来の施設更新等の円滑な実施に向けて、年度間の負担の平準化を図るために社会資本等整備基金への積み増しを行うなど、財政対応力を培ってきたところでございます。
上野委員 ただいまの部長のご答弁の中に、図らずも、中長期的な時間軸の中での財政運営という発言がございましたが、これこそまさに我が党が新公会計制度導入を推進した趣旨に合致するものでございます。
今回、年次財務報告書で、財務諸表を経年的に読み解き、二十一年度の財政運営を分析したことは、住民に対する説明責任を十分に果たし、財務諸表をマクロ的に活用したものとして、私は高く評価するものでございます。今後も、ぜひこうした視点から、各年度の財政運営について説明していっていただきたい、このように思います。
財政環境は当面厳しいと予想されますが、都は、今後も将来にわたりまして都民の安心を支える施策を、都民が信頼できる財政状況を堅持しつつ展開していかなくてはなりません。そのためにも、職員一人一人にこうした新公会計制度の考え方を一層浸透させ、行政を経営するという視点から職務に取り組んでいくことが重要でございます。ぜひとも、都の職員お一人お一人にも、今回の財政対応力の活用という分析編を熟読し、理解していただくことを期待するものでございます。
さて、自治体が真に自立した行財政運営を実現するということは極めて重要なことでございます。そのためには、複式簿記・発生主義を有効なツールとして活用し、多面的な分析を行い、行政運営に経営の視点を取り入れる、いわば行政が経営力を発揮することでございます。このことは、単年度実績や前年度との比較ばかりに着目する、従前のいわゆる大福帳的な官庁会計でできるものではありません。
こうした観点から、今後も新公会計制度を活用しながら財政対応力を堅持していくなど、中長期的な視点に立った財政運営に努めることが必要だと考えますが、最後に局長の見解を伺いまして、私の質問を終わります。
安藤財務局長 これまでの質疑の中にございましたように、改めて振り返りますと、二十一年度は、それまで培ってきた財政対応力を活用するという、都財政にとっては新たな局面に入った年となったわけでありますけれども、これが可能となりましたのも、やはり複式簿記・発生主義会計を取り入れながら、ご指摘がございましたが、中長期的な時間軸を念頭に置きまして、将来に備える財政運営、将来への影響を考慮した財政運営を行ってきたからであるというふうに思います。
他方、都財政を取り巻く環境を見ますと、税が期待できませんので、引き続き厳しい環境が続くことになりますが、こういうときでありますからこそ、官庁会計で把握できない減価償却費を初めとするコストを把握するなど、新たな公会計制度を一層活用することで事業評価における評価手法などを充実させる。そして、これらによりまして、都民の税金が効率的で効果的に活用されているか、事業の将来にわたる費用対効果を見きわめて、個々の施策を今まで以上に検証していく必要があるというふうに思っております。
また、都が担う役割を将来にわたり継続的、安定的に果たしていくためには、基金残高、鈴木先生からもご指摘ありましたけれども、基金残高をできる限り確保するなど、財政対応力を保っていくことが極めて重要だというふうに思っております。
今後とも、複式簿記・発生主義会計のメリットを生かし、中長期的な視点に立ちまして堅実な財政運営を行い、都政の諸課題に着実に対応してまいりたいと思います。

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