■東京都財政委員会(収用委員会事務局)
  平成21年10月27日(火曜日)

上野委員 私からは、収用制度について何点かお伺いしたいと思います。
昨今、八ッ場ダムの問題など、公共事業のあり方などにつきましては、さまざまな意見が出されているところではございますが、問題は、どこに視点を置くのかが大事であると思います。あくまでも、都民、国民の生活を守ることが最優先されなければならないと思うわけであります。例えば防災対策など、まさに都民の安全・安心を守る事業につきましては、一刻の猶予もありません。今後とも、都民が安心して暮らせる安全なまちづくりを着実に推進していくことが求められているわけでございます。
このような急がれる公共事業を実施するに当たりまして、いつも困難な状況になるのが用地取得であります。任意の用地買収が基本でありますが、どうしても取得が困難な場合に、最終的には、土地の収用を行う仕組みである収用制度に頼らざるを得ません。その意味で、都の収用委員会の役割は、東京のまちづくりの推進に極めて重要であると、このように認識しているところであります。
昨年度の当委員会の質疑でも経過を申し上げましたが、私の地元の江戸川区にある都道補助第一二〇号線は、江戸川区と墨田区を連絡する地域生活の中心的役割を果たすとともに、防災拠点につながる防災避難道路としての役割も担っているところであります。この補助第一二〇号線のうち平井地区の約八百メートルが、ようやくことしの五月に開通をいたしましたが、工事に際しましては、用地買収に応じず、土地を明け渡さない方が残ってしまったために、収用手続を活用して土地取得に至ったわけであります。開通によりまして、これまで狭小な生活道路に入り込んでいた多数の通過車両が排除されました。また、白鬚地区と小松川地区の両防災拠点を結ぶ災害時の避難路が確保されるなど、地域の安全性や防災性が著しく向上したわけでございます。突然襲ってくる災害から都民の命と生活を守ることは、我々の責務であり、私は一刻も早い開通を強く要望してまいりましたが、任意買収がなかなか進まず、結局十四年もの月日がかかったわけでありました。
このように、任意での用地買収だけではなかなかインフラ整備が進まず、計画が予定どおりいかない案件が都内にはまだまだ残っております。任意買収が困難な案件を着実に解消していくに当たりまして、公正中立な都収用委員会の果たす役割は、ますます大きくなっているのであります。
昨年度の事務事業説明で、都収用委員会が取り扱っている事件の状況について質問いたしましたが、圏央道など、大規模なインフラ整備に伴う事件や、他の道府県でほとんど取り扱うことのない、再開発事業に関する処理が難しい事件が増加していると伺っております。状況は一層厳しくなっていると思われますが、二十一年度もこのような状況が続いているのか、あるいは変化が見られるのか。最近の収用事件の動向と今後の見込みについて、まず、お伺いいたします。
野口収用委員会
事務局長
まず、最近の収用事件の動向でございますが、都収用委員会が取り扱っております事件数は、平成十二年度以降おおむね百件を超えておりまして、全国で最も多くの事件を取り扱っております。
また、その事件の内容でございますが、マンション敷地の収用事件のように、権利者が多数存在し意見の確認などにかなりの時間を要するものや、ただいま理事がおっしゃいましたような市街地再開発事業などに伴う複雑困難な案件が多数発生しております。
事業別では、環状二号線などの区部環状道路の整備に係るものや、あかずの踏切を解消する連続立体交差事業に関するものなど「十年後の東京」計画に掲げられた事業に関する収用事件が増加しております。
また、これまで、収用制度を活用しようとする区や市に対しまして、PRや相談、支援の取り組みを行ってまいりましたが、区や市が行う事業に伴う申請も増加傾向にございます。
次に、今後の見込みでございますが、今申し上げました収用制度を積極的に活用しようといった起業者の動向などによりまして、例えば今年度は、昨年度を上回る新規申請が想定されるなど、取扱事件数の増加傾向が続くものと思われます。
また、事件の内容面でも、一層、複雑困難な案件が増加していくなど、収用委員会の直面する状況は、一段と厳しいものとなっていくことが見込まれております。
上野委員 都におきましては、東京がさらに機能的で魅力的な都市に生まれ変わるため「十年後の東京」計画に基づきまして、区部環状道路の整備や鉄道の連続立体交差事業などを推進していますが、大規模なインフラ整備は、いよいよ佳境に入ってきた感があります。ただいまの答弁にありましたように、新規の収用申請件数も増加傾向にあるということですが、今後とも、事業の終了時期が近づくにつれ、収用申請の増加が予測されるとともに、これまで収用事件を申請したことがない区市などからも多数相談が寄せられるなど、収用制度を活用しようといった動きはますます活発になっていくと思われます。
その一方で、少子高齢化の影響でベテラン職員が大量に退職するなど、都庁のスリム化が進んでおります。今後は、少数精鋭の体制で、増加する事件の処理を進めていかなければなりませんが、昨年度の質疑の際に理事者からは、迅速な事件処理を進めるため、OJTの強化など、職員の専門能力の向上に向けた取り組みを行っていくとの答弁がありました。こういった厳しい状況の中で、収用委員会の運営を支える事務局では、事務処理能力の向上に向けまして、具体的に、どのような取り組みを行っているのかお伺いいたします。
野口収用委員会
事務局長
収用事件の処理は非常に専門性が高いため、厳しい状況の中で公正かつ迅速な事件処理を行う収用委員会を支えるためには、必要な事務局の職員体制を確保するとともに、事務局職員の事件処理能力の向上が重要でございます。そこで、事務局といたしましては、職員の事件処理能力の向上を、局全体で取り組む二十一年度の目標として掲げまして、さまざまな取り組みを進めているところでございます。
具体的に申し上げますと、これまで事件処理は各担当者が単独で事務を行ってまいりましたが、ベテラン職員が減少しまして経験の少ない職員がふえてまいりましたので、平成二十一年度からは、経験豊富なベテランの主査が経験の少ない若手職員とペアを組みまして事件処理を行う体制といたしました。これによりまして、事件処理を適正かつ着実に行うとともに、日々の実務指導を通じて、ベテラン職員が持つノウハウをきちんと次世代を担う職員へ継承させていこうと考えております。
また、都収用委員会には、大都市東京の特色を反映しまして、他の自治体にも例がない困難事件の申請もなされております。前例踏襲的な手法では、なかなか事件処理が進まないという状況も発生しております。このような状況にも的確に対応できるように、職員にみずから考える力を身につけさせたいと考えておりまして、平成二十一年四月からは、一年間という比較的長いスパンで、新たに収用事件を担当することになった新任職員に対しまして、事前に課題を提示しまして、調査、研究を行わせ、一定の見解をまとめて発表させるといったような実務型の研修も実施しているところでございます。
さらに、事件処理に携わる全職員が参加しまして、担当する事件における課題を検討する月例会議を開催いたしまして、意見交換を通じて知識やスキルの共有化を図るなど、職員の事務処理能力を向上させる取り組みを鋭意行っているところでございます。
上野委員 事件処理の適正化、そして、迅速化に向けた都収用委員会の取り組みを伺ってまいりましたが、引き続き積極的な取り組みをお願いしたいと思います。
実際に収用制度を活用することによって、長年のまちづくりの懸案が解決していくのでありますから、今後、収用制度の一層の活用が図れるよう、区市などの起業者に対しまして、収用制度に関する情報提供やPR活動をさらに推進する必要があると思います。さらに、収用制度は、一般の都民の方々にはなかなかなじみが少ないものですが、制度の円滑な活用を図るためには、まず、収用制度の意義や、まちづくりに大きく貢献できるという点をさらに周知し、都民に対し理解を求めていくことが必要だと思います。
収用制度の積極的な活用は、今後の東京のまちづくりを推進していく上でさらに重要になってくるものと考えますが、最後に、事務局長の決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
野口収用委員会
事務局長
収用制度が東京のまちづくりに果たすべき役割は、非常に大きいものと認識しているわけでございますが、この観点から、事務局といたしましては、収用制度の活用促進に向けまして、起業者に対しまして、収用制度に関する情報提供や支援を一層、推進、充実してまいります。
また、都民に対しましては、収用委員会事務局のホームページなどで制度の周知を図ってまいりましたが、理事ご指摘のとおり、一般に都民にとりましては収用制度はなじみの薄いものでございます。収用制度の活用をさらに推進していくためには、都民の理解と協力を得ることが極めて重要だと考えておりますので、ホームページの内容を一層充実させるとともに、さらにわかりやすいものとなるよう検討してまいりたいと考えております。
収用制度を活用していこうとする機運が高まっている一方で、複雑困難な事件も増加しており、大変厳しい状況ではございますが、事務局として体制の確保に万全を期しまして、今後とも、収用委員会の運営をしっかりと支えてまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。

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