■東京都財政委員会(財務局)
  平成21年09月17日(木曜日)

上野委員 私からは、平成二十年度年次財務報告書について何点か伺ってまいりたいと思います。 この年次財務報告書は、民間企業で申しますと、経営成績や、あるいは財政状況を株主や投資家に報告するアニュアルレポートに相当するものであります。つまりコスト情報、ストック情報、さらにはキャッシュの流れをマクロ的な視点から分析し、より多面的に都の財政状況をあらわすものであります。
我が党は、かねてより複式簿記・発生主義会計による公会計制度の導入を主張してきたところでございますが、この新たな公会計制度の成果を活用して、都の財政状況をつまびらかにした年次財務報告書は、東京都の公会計制度改革の一つの到達点であり、これまでの改革の取り組みが結実したものであるといっても決して過言ではないと、このように思っている次第でございます。
年次財務報告書の発行は、今回で三回になり、回を重ねるごとに進化、発展しておりますが、そうした事例として、例えば、年次財務報告書の一一ページを見ますと、貸借対照表、行政コスト計算書、キャッシュ・フロー計算書、正味財産変動計算書の四つの財務諸表の関連性について、イラストを活用しながらわかりやすく説明されております。それぞれの財務諸表を有機的に関連づけながら分析することは大変重要であります。本日はそうした観点から幾つかの質問をしたいと思います。
そこでまず、一五ページの行政コスト計算書におけます当期収支差額について伺います。民間企業であれば、損益計算書の収益から費用を差し引いた収支の黒字をふやすことを目的に経済活動を行っているわけでございますが、行政コスト計算書における収支差額は、民間企業における収支差額とは当然のことながら意味合いが異なっております。今回の行政コスト計算書の当期収支差額の収入超過額、約一兆一千億円、これについて、ともすると、この金額をもって単純に行政としての財務状況が良好で余裕があるとの誤解がなされかねないわけでありますが、こうした誤解は、東京富裕論を招きかねないので注意が必要であります。ここでは、行政コスト計算書の収入超過部分の意義は何であり、それをどのように活用してきたかが重要であります。そこでまず、行政コスト計算書の当期収支額の収入超過額の意義と活用状況について、わかりやすく説明していただきたいと思います。
長谷川主計部長 行政コスト計算書における当期収支差額は、経常的な行政サービス活動にかかる収入と費用との差し引きを示すものでございまして、ここには、社会資本の整備などの資産の形成にかかる収支は含まれてございません。したがいまして、当期収支差額がプラスであるということは、経常的な行政サービス活動の費用が税収などの範囲内で賄われているということを示しておりますけれども、その黒字額自体が財政上の余剰を示すものではございません。
当期収支差額の収入超過額は、財務諸表上、貸借対照表の正味財産の増加に反映するものでございまして、二十年度の正味財産の増加は、そのほとんどが、この当期収支差額の増加によっております。正味財産の増加は、資産の増加と負債の減少によって生ずるものでございまして、具体的には、資産の増加は、主に都市インフラの整備、更新や将来の需要に備えた基金の積み立て。負債の減少は、主に都債残高の減少でございますので、当期収支差額は、これらに寄与しているものというふうに考えております。
上野委員 ご答弁ありましたように、この当期収支差額の収入超過額が、財政上の余剰を示すものではなくて、都民にとって必要な都市インフラ整備や基金積み立て、都債残高の圧縮など、将来への備えに有効に活用されてきたことが理解できたわけでございますが、ここで重要だと思うのが、行政コスト計算書の当期収支差額が、基金や都債、社会インフラ整備という形で、単年度の財政運営という枠を超えて、将来世代の財政運営にも影響を及ぼしている点であります。
今回の年次財務報告書の二七ページには、新たに、財務諸表から見る受益と負担のイメージという観点からの分析が行われております。ここでも指摘されておりますように、都債残高の圧縮は、将来世代の負担の軽減につながるものであり、基金積立金は、次年度以降の受益として成立することができます。また、当期収支差額を活用した社会インフラ整備の便益は、将来世代も享受することになりますが、同時に、維持管理や更新にかかわる負担も生ずることになるわけであります。
従来の官庁会計は、単年度主義に根差しておりまして、こうした将来世代の受益と負担という中長期的な時間軸の中で、財政運営をとらえることが困難でありました。このイメージ図では、行政コスト計算書と、貸借対照表を有機的に関連づける中で、中長期的な時間軸の中での財政運営を視覚的に整理しておりまして、大変有意義な分析であると思います。
将来世代の受益と負担と関連いたしまして、今後の都政の大きな課題に社会資本ストックの維持更新の問題があります。これも先ほどの意見等もありましたけれども、今後、高度経済成長期やバブル期を中心に整備された社会資本ストックの老朽化が進んでまいります。そのため、機能維持のための維持管理コストが増大していくことが見込まれます。それとともに、計画的な更新も必要になってくるわけであります。その一方で、今後急速に少子高齢化が進んでまいりますと、将来世代の負担能力は長期的には低下していくことが見込まれるわけであります。したがいまして、このような状況にあっては、新たな公会計制度の視点を取り入れながら、現役世代と将来世代の受益と負担のバランスにも配慮して対応する必要があると考えますけれども、見解を伺います。
長谷川主計部長 ご指摘のとおり、道路、橋梁などのインフラ資産、あるいは行政財産といった社会資本ストックの維持更新は、今後の都政における非常に大きな課題の一つでございます。社会資本ストックの更新の必要性は、一定の目安ではございますけれども、財務諸表上、減価償却累計額となってあらわれてまいります。減価償却累計額は、年数の経過による社会資本ストックなどの資産価値の減少コストである減価償却費が貸借対照表上に累積計上されたものでございまして、社会資本ストックが老朽化していることを意味するものでございますけれども、十八年度からの三年間の推移を見ますと一貫して増加しております。
減価償却累計額の増加は、将来の社会資本ストックの更新需要の増嵩を意味しておりまして、したがって、将来必要な財源をどのように確保するかが、財政運営上の課題となってまいります。
一方、お話のとおり、今後生産年齢人口の減少が予測され、将来世代の負担能力が長期的には低下しているということが見込まれる中にありまして、こうした需要に的確に対応していくためには、将来世代の受益という観点とあわせまして、世代間の負担の公平性を考慮することがますます重要になってくると認識しております。
このため具体的には、資産の長寿命化や維持管理コストの低減などによる将来世代の負担そのものの軽減を図ること。これとともに、財務諸表の分析などを通じまして、世代間における受益と負担のバランスに留意しながら、基金の積み立てや都債発行の抑制などで培ってまいりました財政の対応力を効果的に組み合わせて活用することによりまして、都民の共通財産であります社会資本ストックの維持更新を着実に行っていくことが必要と考えております。
上野委員 ただいま、ご答弁いただきましたように、新たな公会計制度の視点を取り入れながら、中長期的視点に立って基金や都債を適切に組み合わせ、将来に向けて、現役世代がしっかり準備しておくべきものと、将来の我々の子どもや孫に任せるべきものとのバランスを、少子高齢社会の中で十分に考慮することが大変重要であると思います。
次に、東京都の資金の状況について伺います。キャッシュ・フロー計算書は、資金の流れを、行政サービス活動、社会資本整備等投資活動、財務活動、この三つに区分しておりますが、各区分別に現金収入と現金支出の流れを整理することで、従来の官庁会計とは異なり、より多面的な分析が可能となったわけであります。そこでまず、一九ページの図にあります行政活動キャッシュ・フロー収支差額、いわゆるフリー・キャッシュ・フローの推移について質問したいと思います。
行政活動キャッシュ・フローの収支差額は、通常の行政活動や社会資本整備にかかわる現金収支でありまして、ここには、都債の借り入れや償還など、財務活動に関する部分は含まれておりません。この行政活動キャッシュ・フロー収支差額は、十八年度時点では約九千億円あったわけでございますが、十九年度時点では、約四千億円、二十年度時点を見ますと約三千億円にまで減少しております。そこで、十八年度から二十年度にかけて、行政活動キャッシュ・フロー収支差額が大幅に減少している、この点につきまして、どのような分析評価をされているのか見解を伺います。
長谷川主計部長 ちょっとかみ砕いて申し上げさせていただきますと、行政活動キャッシュ・フロー収支差額、これを経常的な行政サービス活動に伴う収支と、社会資本整備等投資活動の収支の二つの側面に分けて分析いたしますと、十八年度から二十年度にかけて、社会資本整備等投資活動の収支差額に大きな変動がございます。十八年度の社会資本整備等投資活動収支差額は、約四千億円の支出超過でございましたけれども、十九年度は約九千億円の支出超過、二十年度は約八千億円の支出超過と、十八年度に比べて支出超過額が拡大しており、これが行政活動キャッシュ・フロー収支差額の減少に大きく寄与しております。
この要因といたしましては、そもそも社会資本整備等投資活動収支においては、基金への積み立ても支出として計上されておりまして、この三年間を見ますと、基金の積立額が、十八年度が二千億円だったのに対しまして、十九年度は約七千億円、二十年度は約五千億円と大きく増加したことによるものでございます。このように、行政活動キャッシュ・フロー収支差額が大幅に減少しているということでありますけれども、決して資金繰りが悪化したということではございませんで、むしろ将来を見据えた財政基盤の強化に積極的に取り組んだ結果であるというふうに評価できるものと考えております。
上野委員 よくわかりました。
次に、キャッシュ・フロー計算書の財務活動収支差額の推移についてお伺いいたします。
一九ページの図にあるとおり、十八年度から二十年度にかけて、いずれの年度も財務活動収支差額はマイナス、すなわち支出超過になっておりますが、十八年度の財務活動収支差額が約八千億円の支出超過となっており、また十九年度、二十年度の支出超過額に比べますと際立って高い水準にあります。そこで、十八年度から二十年度の財務活動収支差額の推移から、どのような分析、評価をされているのか見解を伺います。
長谷川主計部長 財務活動収支差額は、十八年度から二十年度にかけて、お話のとおりいずれの年度も支出超過になってございますけれども、このことは、都債の発行額を都債の償還額が上回っていることを意味しております。特に十八年度の支出超過額が約八千億円と高い水準にありますのは、減債基金の積立不足の解消に努めたことなど、一時的に支出が増加したことによるものでございます。
減債基金の積立不足につきましては、これは過去において臨時的な財源対策として、積み立てを行わなかったということによって生じたものでございますけれども、十八年度末までに積立不足の大半が解消されまして、十九年度末までに全額が解消されたところでございます。これによりまして、一時は、約一兆円にも達しておりました、いわゆる隠れ借金、これの処理もおおむね完了したものでございます。
いずれにせよ、この間の財務活動収支差額の推移からもわかりますように、これまで都債発行の抑制や着実な償還により、都債残高の圧縮に努めてきておりまして、これによりまして、将来世代の負担の軽減が図られているというふうに認識しております。
上野委員 財務活動収支差額の推移にも、減債基金積立不足の解消などの財政健全化に向けた取り組みが反映しているということがわかりましたし、また、行政コスト計算書や貸借対照表の分析に加え、キャッシュ・フロー計算書の分析評価をお聞きいたしまして、これまで都が直面する諸課題に積極的に対応しながらも、基金を着実に積み立て、都債の発行余力の確保にも努めてきたことがよくわかったわけでございます。このことは、まさに行政コスト計算書、貸借対照表、キャッシュ・フロー計算書が相互に有機的に関連していることを物語っているものと思います。
これまで答弁いただきましたように、従来の官庁会計では把握できなかった情報が、複式簿記・発生主義会計による公会計制度の導入によって明らかとなりました。多面的な分析が可能になったわけでございます。特にストック情報やキャッシュ・フロー情報を把握することで、中長期的な時間軸の中での財政分析を行うことが可能になったことは極めて重要なことであると考えております。
これまで東京都は、地方自治体における公会計制度改革のパイオニアとして走り続けてきているわけでございますが、パイオニアであるからこそ必然的に苦労も大きく、同時に注目を浴びる存在でもあるのだと思います。
今回の年次財務報告書は、内容的にも一層充実改善が図られております。より質の高い分析が行われているわけでございますが、今後とも、新たな公会計制度の成果を高めていくためにも、この充実改善の歩みをとめることなく一層の努力を重ねていただきたいと思うわけでございます。
最後に、今後の公会計の活用に向けました局長の決意をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
村山財務局長 公会計制度の活用についてのお尋ねでございます。三年目になりまして、今のご質疑の中でも、三年間の数字を、いわば並べてのご質疑をいただいたわけでございますけども、三年目になりまして、私、公会計の活用のステージが少し変わってきたといいましょうか、バージョンアップしてきたんだなというふうに、今伺いながら、非常にその感を強くいたしました。
公会計制度が導入されたことによりまして、減価償却累計額であるというような、いわばこれまでの官庁会計のみでは捕捉することができなかった時間のコストといいましょうか、時間の影響というふうなことについて把握できるようになりまして、これによりまして、ご指摘をいただいた、現状というものが将来にどういう影響を与えるんだと、それを踏まえた上で、今日それに対してどう対応していかなければいけないのかというようなことについても、計数として把握をし、それに基づいた具体的な議論を、中長期的な時間軸の中で議論をし、方針を立てることが可能となり、またそれが求められることがはっきりしてきたということがいえます。
あわせて、今日都財政が置かれた状況をより客観的に把握できるようになった結果、少子高齢化で、ありていにいえば、税金を納めていただける方が、将来、余り多くなくなっていくというような状況も想定しなければならない中で、主計部長からご答弁申し上げたように、現役世代と将来世代が、受益と、それからそれに対応する負担についてどういうふうに役割を分担していかないと、安定的な東京づくり、あるいは東京の維持管理、あるいは都民生活の安定、それから都財政、それを支える都財政の安定というものが実現できるのかできないのかというふうなことについても、そういった時間軸の中で分析を深めて考えていくことが可能になったというふうに思っております。
同時に、その行政活動キャッシュ・フロー収支差額や財務活動の収支差額の推移などについて、三年間の数字をご指摘をいただいたわけでございますけれども、そういう意味では、経年変化を分析する中にあって、この間、東京都が、将来そういう想定されるいろいろな変動要素に備えて、実際に何をやってきたんだよと、中長期的な施策を支える強固な財政基盤といつもいってきている、申し上げてきているわけでございますけれども、そのためにどういうことを、どういうふうに具体的にやってきて結果を残してきたんだということが、いわゆる官庁会計ではわからない部分も含めて、ここでは明らかになってきているわけでございまして、私どもにとって見ると、なかなかつらい会計システムが定着しつつあるなという印象を、率直に申し上げれば、そういう面もないわけではないぐらいに、よくわかるようになってきたというふうに感じているところでございます。
そういう意味では、私ども今日、都財政を取り巻く環境が非常に厳しくなって、将来に向けてもいろいろなことがあるわけでございますけれども、そういう外部環境の中で、これからどうしていくのかということについて、我々にとって非常に必要不可欠な手段であるとともに、それらの点について、議会の皆様方、都民の皆様方からご評価をいただいてご議論いただく上でも、非常に有意義な、そういういい方をすれば、あえて申し上げればツールというような意味においても大切だということが、私としては非常に実感を、今回三年目になりまして、しているところでございます。
もちろん、ご指摘いただきましたように、データを示すだけではなくて、そのデータ自体を評価検証して、関連づけて、複眼的な視点で分析をするということが大事で、バージョンアップをさらに強めていかなければいけないというふうに思っておりますので、先ほど申し上げましたように、本定例会の代表質問で質疑がございましたように、事務事業評価というものにおいて、公会計手法も活用した分析を取り入れるなど、そういう意味での活用方法のさらに広がりというものも今後追求してまいりたいというふうに思っておりますので、いろいろご指摘、厳しいご指摘をいただきつつ、私どもとしても、よりちゃんと腹を据えた財政運営に取りかかる手法として、今後ますます公会計制度の活用、あるいは開発向上に努めてまいりたい、かように考えております。

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